手紙
昨日の記事で父の事を書いたら、父にまつわるアイテムを思い出した。
それは手紙である。
父は同世代の男と同じように生活は「仕事が中心」であった。
父の会社は当時は土曜日まで仕事で日曜と言えばゴルフなどで家を明けていた事も多かった。
当然のようにお互い会話も少なく、その様な状態が続いたまま私は学校を卒業し就職で東京へ行く事になった。
荷物をまとめ家を出る時に父に呼び止められ一通の手紙を手渡された。
東京へ向かう新幹線の中で私は父からの手紙の封を切り読んだ。
そこには社会人となる上で心構えなどが一通り書かれていた。
「怒鳴られ叱られても、それも給料のうちである。」
「上司に誘われても博打だけはするな」
「帰ってもいいと言われるまで帰るな」等、軽く50ヶ条ほど書いてある。
「親元を離れるからと言ってハメを外さないよう」と続き、最後に
「父は今までと同じようにお前のそばにいる。頑張りなさい」と締めくくられていた。
今まで父とは疎遠であったと思っていたのは私の方からだけであり、父はいつも私の事を見ていたのだと
気づいた瞬間であった。
その手紙を私の新しい職場で何度も読み返した。何度も励まされた。
その手紙をもらってから五年後、今から14年前に父は肝臓を患い他界した。
その父からの手紙は今、私のデスクにあって何度も読み返している。
その手紙を読むたびに父がそばにいるような感じになるのである。